晴れ。ぞうとねことくまをベランダに出す。
檸檬シロップの底にたまった砂糖をスプーンでかき混ぜる。褐色なのはきび砂糖で仕込んだからだろう。炭酸水で割って飲むのを楽しみに混ぜる。
蕎麦を湯がいて昼食をすませ、ソファで『雲をつかむ話』を読む。多和田葉子の最新刊だ。物語の語り手は作家その人によく似ている。ベルを鳴らした男から「雲蔓式」に思い出される「犯人」との話。あと数ページのところで眠くなって、起きたら部屋が橙色をしていた。洗濯ものを取り込む。よく乾いている。
夕食のスープに入れる野菜を賽の目にしながら「犯人」について考える。自分の外側にあると思っていたものが内側に入り込んで、「あなたも犯人でしょう」と静かに指をさされた気がした。無知であること、なにも知ろうとしなかったこと。女医の言葉に救われるけれど、わたし自身も「犯人」であり、そうであるかもしれないというひやりとした思いは消えない。

雲をつかむ話 / 多和田葉子 / 講談社